「養育費の減額請求をする離別父親は、まだマシな部類です(前編)」では、母子世帯の現状や養育費の受給状況など母子世帯がなぜ貧困に陥りやすいのかご説明いたしました。後編では、なぜ離別父親が 養育費 の 減額 もしくは養育費を踏み倒すのか、その理由をご説明いたします。
日本では養育費未払いに対する強制的な罰則がないために、母子が依然として弱者であり、制度上いかに守られていないかがお分かりいただけるかと思います。
養育費の減額請求をする離別父親は、まだマシな部類です(後編)
離別父親が養育費を踏み倒すワケ
こんな不景気で男性も稼げないから仕方ないでしょう。最初から経済力のない人と結婚した母親が悪いのでは?という声が聞こえてきますが、決してそうでもなさそうです。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の副主任研究員である周燕飛氏によると、「離婚母子世帯の養育費の受取割合は、離別父親の年収が500万円以上の層では25.9%(注i)となっており、200万円未満層(4.7%)よりその割合は20ポイント以上高い。しかし一方、この数字の裏返しは、年収500万円以上の離別父親ですら、その74.1%は養育費を支払っていない。」、そうです。(※周氏コラムの引用)
要するに、養育費を払える経済状況にあっても、払わない非貧困層の父親が74.1%もいるということになります。
この理由を、周氏は、「離別有子男性の現在の婚姻状況を調べたところ、離別父親の再婚率は59.1%(169人中100人)に達していることが分かった。また、単身の離別父親に比べ、再婚した離別の父親は明らかに年収の高い層に偏っている。つまり、貧困層の父親は「支払い能力の欠如」、非貧困層の父親は「新しい家族の生活優先」が理由」、としています。(周氏コラムの引用)
養育費を継続受給していてもリスクはつきもの
よって、継続的に受給できている母子世帯は5世帯に約1世帯という計算になるわけですが、その1世帯さえも、いつ養育費が支払われなくなるか、いつ減額されるか、分からない状況にあります。
そもそも養育費の取り決めが行われている37.7%の母子世帯のうち、何%が取り決めを公正証書にしているのでしょうか。往々にして、離婚には修羅場がつきものであり、穏やかに話し合って公正証書を作成できるくらいなら、離婚していないでしょう。
仮に冷静に話し合われた結果、作成できたとしても、公正証書に書かれた養育費の金額は状況によっては調停で減額が認められてしまいます。
また、未払いが生じた際に強制執行をしたくても、相手と連絡が取れなくなれば、相手を探すことになり、養育費を必要としている経済状況の中で仕事と子育てで手一杯の母親に、離別父親を探す時間が果たしてあるのか、甚だ疑問です。
統計から見ると養育費減額請求が良心的に見えてくる不思議
前述した数字を見ると、養育費未払いに対する強制的な罰則がないために、日本では母子が依然として弱者であり、制度上いかに守られていないかがお分かりいただけるかと思います。
そして、養育費支払いは離別父親の「誠意」のみが試される点において、養育費減額請求をする方々は、全く支払わない方々や遅かれ早かれ支払わなくなる方々と比較すると、養育費の金額について話し合おうとする分だけ、まだ良心的であり、まだマシと言えます。
それが、悲しくも情けない今の現実です。
まとめ
養育費の減額請求をする離別父親は、まだマシな部類です(後編)
離別父親が養育費を踏み倒すワケ
養育費を継続受給していてもリスクはつきもの
統計から見ると養育費減額請求が良心的に見えてくる不思議
参考
平成23年度 全国母子世帯等調査結果報告 厚生労働省
ひとり親家庭等の現状について 厚生労働省
家計調査(二人以上の世帯)平成27年(2015年)12月分速報(平成28年1月29日公表) 総務省
なぜ離別父親から養育費を取れないのか 副主任研究員 周 燕飛