時効は、殺人や強盗などの刑事事件に対してのみ適用されるものではありません。時効制度は借金にも適用され、一定期間が経過すると借金が消滅することがあります。
しかし、時効の成立には一定の要件があり、借金から逃れ続ければ時効が成立するということでもなさそうです。これから 借金の時効 について、解説いたします。
借金がチャラになる!?借金の時効について考える
借金は時効で消滅するの?
民法で規定される時効には、「取得時効」と「消滅時効」の2種類が存在します。これからご説明する借金の時効は、消滅時効に該当します。消滅時効が成立すると、債権者が返済の請求をしても、債務者には借金の返済をする義務がなくなるという趣旨のものです。
消滅時効とは、ある権利が一定期間行使されない場合、その権利を消滅させてしまうことです。一定期間とはどの程度の期間なのか、また権利が行使されない場合とはどのような場合を指すのかに付いて、考えてみることにしましょう。
借金の時効が成立する期間
時効が成立するまでの期間、つまり上述の「一定期間」の長さは、借入先によって異なります。家族や友人など個人からの借入の場合、時効成立までの期間は10年です。借入先が、銀行や消費者金融などの法人の場合は、時効成立までの期間は5年ということになります。
時効が成立するまでの期間はご理解いただけたと思いますが、その期間がいつからスタートするのか、気になりませんか?民法第166条において、「消滅時効は、権利を行使することができるときから進行する。」と規定されています。
権利を行使することができるときとは、具体的にいつなのでしょう。
返済期日を定めていて、借入後まったく返済しなかった場合は、返済期日の翌日から時効が進行します。借入後に1回以上返済した場合は、最後に返済した日の翌日から時効が進行します。
返済期日が定められておらず、借入後まったく返済しなかった場合は、契約日の翌日から時効の進行が始まります。借入後に1回以上返済した場合は、最後に返済した日の翌日から時効が進行します。
返済期日がいつ到来するかわからない場合は、返済期限到来時に時効の進行が開始します。
時効までの期間はリセットされる
ある手段を使うことで、すでに開始した時効の進行を止めることができ、さらに時効成立までの期間をリセット(時効の中断)することができます。
その時効の進行を止めてリセットする手段には、以下のようなものがあります。
- 支払督促の申立て
- 訴訟の提起
- 民事調停の申立て
時効の完成が間近に迫っている場合は、支払督促の申立てや訴訟の提起といった裁判上の請求を行っている時間的余裕がありません。まずは内容証明郵便を送付し時効を停止させたうえで、6か月以内に裁判上の請求を行うことで、時効を中断することができます。
裁判上の請求以外に、債務者による債務の承認によっても時効は中断します。債務の一部弁済なども、債務の承認にあたります。
注意が必要なのは、時効完成後の債務の承認です。5年もしくは10年の期間が経過した後に債務の承認をした場合、時効が完成したにもかかわらず、時効は中断してしまうことになります。
「権利が行使されなかった場合」とは、裁判上の請求等で時効の中断を行わなかった場合のことを指します。
時効成立後に、借金は自動的になくなるのか?
時効は、5年もしくは10年の期間が経過しただけで成立するものではなく、時効の援用を行う必要があります。時効の援用とは、「この借金には時効が成立しています!」と、内容証明郵便(配達証明付)などで債権者に対して主張することです。
時効の援用を行うまでは、時効は成立していませんので、注意が必要です。
まとめ
借金がチャラになる!?借金の時効について考える
借金は時効で消滅するの?
借金の時効が成立する期間
時効までの期間はリセットされる
時効成立後に、借金は自動的になくなるのか?