最近よく耳にする「 シンママ 」という言葉。その言葉の響きからイメージするもの、そして現実との乖離について考えていきます。
ひとり親家庭になった理由はさまざまにありますが、今回は離別によってシングルになった場合を前提とします。
シンママという言葉が持つイメージとその現実
「シンママ」のイメージ
ある説によると、「シンママ」という言葉はネットの世界で生まれた言葉だそうで、「シングルマザー」の略語だと言われています。インターネットで「シンママ」という言葉を検索すると、シンママブログやシンママ掲示板が多く表示されます。
そこには、おしゃれで自由な「シンママ」たちが、第二の人生を悩みながらも楽しんでいる様子が繰り広げられています。実際、母子が密着しすぎることなく、それぞれを一人格として尊重しようとする考え方は今まであまりなかったかもしれません。
朝から晩までくたくたに働いてぎりぎりの生活という現実も、彼女たちからは想像できません。母親が女手一つで子どもを育てていても、輝いていられる世の中が到来したことは喜ばしいことです。
母子家庭の現実
女性の社会進出により、男性と同じとまではいかなくても、自分と子どもが生活していくのに不自由しない程度の給料を得る女性が増えています。
一方、インターネットの環境を整えるどころか、今日一日を生きていくのが精一杯の「母子家庭」が未だに多いのも現実です。むしろその方が多いでしょう。
「勝手に結婚して子どもを産んで離婚した」として実家の親や親戚、友人に頼ることもできずに孤立している母親も多いですし、元夫から逃げるように離婚し、身を隠しながら生きている母親もいます。
彼女たちは正規に雇用されず、非正規労働者として安価の給料、不安定な雇用状態で働くしかないという現実の中で生きています。
お金がないため子どもに思うように教育をつけてあげられない、長時間働かなくては生きていけないので子どもとの時間がとれないなど生活も過酷ならばその悩みも大変深刻です。
イメージの一人歩き
今、危惧すべきことは、「シンママ」という言葉のイメージの一人歩きです。おしゃれで自由な「シンママ」たちは、自分の人生を存分に謳歌しているイメージです。
当然子どものことは大切にし、育児や家事もしっかりこなします。その上で自分の生き方も大切にしますし、その中では恋愛をしたりもするでしょう。
しかし、日本では「母子家庭の母親が恋愛だなんてとんでもない」という風潮が未だに根強くあります。なぜいけないのか、理由などありません。「普通の結婚生活」を送る大多数の人々は、「母親」の恋愛に対してとにかく嫌悪感を抱くのです。
彼らにとって、母子家庭の母親は貧しくて苦労してなりふり構わず生活していなくてはならない存在なのです。贅沢ではないにしろ、一般家庭のように不自由のない生活を送っていることなど許せないのです。
そんな中「シンママ」という新しい言葉が生まれ新しい生き方が確立されたことで、母子家庭の母親全部をこの言葉のイメージに当てはめ、逆風を与えるのです。事実、ネットの匿名掲示板には「シンママのくせに」「シンママなのに」という言葉がまるでキーワードのように飛び交っています。
誰もが生きやすい社会に
男性であろうと女性であろうと、父親であろうと母親であろうと、人間として生まれてきたからには、自分の人生を大切に生きる権利があります。むしろそれは私たちが果たさなければならない義務であるともいえます。理由があって離婚した「シンママ」であってもそれは同じです。
確かに「シンママ」の中には母親失格とも言える人もいます。悲しい事件を引き起こしニュースになることもあります。そして世間の「これだからシンママは」という批判。けれどもそれはほんの一部であり、シンママに限ったことではないということを忘れてはなりません。
「シンママ」「シングルマザー」「母子家庭の母親」・・・。さまざまな呼び名があり、その言葉についているイメージもそれぞれです。しかし、それはあくまでもイメージです。いずれにしても、どのような理由があるにしても、肩身を狭くして生きることを強制される世の中であってはならないのです。
「バツイチ」や「シングルマザー」という言葉の登場により、離婚した女性、母子家庭の母親や子どもたちは昔よりも偏見や差別を受けることは少なくなったでしょう。そして「シンママ」という言葉の登場によりまた新たな生き方が示されることになりました。
しかし、輝いていられる人はまだまだごく一部です。厳しい生活を送る「シンママ」たちに必要な支援が行き渡り、「シンママ」の言葉のイメージと同じように、みんなが輝いて生きられる世の中になることを願ってやみません。
まとめ
シンママという言葉が持つイメージとその現実
「シンママ」のイメージ
母子家庭の現実
イメージの一人歩き
誰もが生きやすい社会に
シンママという言葉が持つイメージとその現実