生活保護制度とは、国民が健康で最低限の生活を送れることを保障し自立を助長することを趣旨とした制度です。しかしながら、この「最低限」の生活を営むための必要額は、暮らしている地域や家族構成によってまちまちです。
また支給額をめぐっては、生活保護を受けている人よりも生活保護を受けていない人の収入の方が少なくなる逆転現象もあって、批判も多く寄せられています。そんな問題も少なくない日本の 生活保護 制度ですが、 支給額 はどのように決定されるのでしょう。
意外と知られていない生活保護支給額の実態
生活保護受給の仕組み
生活保護は個人ではなく世帯単位での支給になります。
例えば、夫は生活保護を受給していないのに、妻のみが生活保護の申請をするといったことは認められていません。また「級地」という定めによって、地域ごとに生じる物価や生活水準の差を生活保護の支給額に反映させる仕組みになっています。
支給額が一律でない1つの理由として、この「級地」があります。この級地と家族構成によって必要最低限の生活費が算出され、世帯全体の収入と必要最低限の生活費を比べて、不足する額が生活保護の支給額ということになります。
つまり、生活保護とは不足分を補う制度ということになります。
生活保護に対する誤解
収入の逆転現象が起こるほど、承認されればそれなりの支給額が期待できる生活保護なのですが、申請には抵抗を感じる人も少なくないようです。
「ほどこし」としての生活保護制度に対する主義・主張であったり、社会に迷惑を掛けたくないという道義的な責任を感じることから、多くの人が生活保護の申請をためらうのです。
生活保護は、困窮した人々にとっての最後の砦となるべき、セーフティネットとしての役割を果たす制度です。
他に頼る手段がないようであれば、生活保護を受給して生活を立て直すきっかけにすることも検討してみてはいかがでしょう。「助長」を目的にしているからこそ、それに見合った十分な支給額が用意されているのですから。
生活保護の種類
生活保護には色々な種類があるのをご存知でしたか?基本となる生活扶助には、食糧費・被服費・水道光熱費・家具什器費などが含まれ、11月から3月は冬季光熱費が加算されます。
生活扶助以外にも、住宅扶助・医療扶助・教育扶助・介護扶助などの生活を営むために必要となる各種費用に対応した扶助が支給されます。生活保護の支給額はこれらの合計金額ということになります。
また、世帯に障害者がいる場合や母子家庭の場合など、各世帯の事情によっても生活保護の支給額は変わってきます。
収入逆転の問題
厚生労働省の調査によると、生活保護を受けていない母子家庭の収入が平均で236万円であるのに対し、生活保護を受けている母子家庭の支給額の平均が268万円という驚くべき結果が出ました。不公平さが浮き彫りとなったこの結果を受けて、生活保護制度に対する批判が高まりました。
このような結果が生まれる一因としては、生活保護を受けるための要件を誤って理解していることも関係しているようです。
3親等内の親族が援助できるようであれば、生活保護の申請は却下されてしまうと勘違いしている人が多いようです。また、行政から3親等内の扶養義務者に連絡が行くことも事実です。
しかし、扶養義務者が扶養する能力を持っていても扶養する意思がなければ、扶養を強制することはできないということを知っておいてください。
また、生活保護支給額と最低賃金の逆転現象が問題となって久しいですが、未だ解決されてはいないといった見方もあります。そうした状態が今後改善されていくのか、その動向を注視する必要がありそうです。
このままでは、最低賃金で働く労働者・生活保護受給者の双方にとって、不幸な結果をもたらし兼ねません。
まとめ
意外と知られていない生活保護支給額の実態
生活保護受給の仕組み
生活保護に対する誤解
生活保護の種類
収入逆転の問題