「自覚がないだけかもしれない?身近すぎるモラルハラスメント(前編)」では、加害者にとっても被害者にとっても自覚の難しいモラルハラスメントについてご説明いたしました。後編では、実際に自身が モラルハラスメント の加害者だと気づいた例をご紹介いたします。
自覚がないだけかもしれない?身近すぎるモラルハラスメント(後編)
自分がモラハラの加害者だと気付いたA子さんの話
取材に協力していただいたA子さんは高校生のお子さんがいる主婦です。A子さんは自分がモラルハラスメントの加害者だということに気付いたという話をしてくれました。きっかけは友人が夫からモラルハラスメントを受けているという話を聞いたことでした。
「それまでモラルハラスメントという言葉もよく知らなかったんです。友人はご主人に従順で何でもご主人の承諾がなければ決めることができなかったし、いつもご主人に怯えていました。そんな話を聞いているうちに私の実家もそうだったなーって思いました。私の父もモラルハラスメントだったのかな、と」。
記憶を辿るとA子さんの父親は母親に対していつも高圧的で、A子さんの前でも母親を馬鹿にするような言動をとっていました。
「正しいのは父、間違っているのは母。だから母は父に叱られて当たり前だと思っていたし、私も父の言うことを聞いていればいいのだと思っていました。それがモラハラだったんですよね」、とA子さんは自身の家庭環境を振り返ります。
「私には妹がいたのですが、私は妹に対していつも高圧的でした。妹が何か間違ったことをしたら怒っていました。間違ったことをしたのだから怒らなければいけないと思っていたんです」。
A子さんは物事を「正しい」「正しくない」という基準で考え、正しくないことをする相手は罰してもいいと思い込んでいたのだそうです。
「それは他人に対してではなく自分の身内や保護下にある人に対して、そうなるんです」、とA子さんは深刻な表情で話してくれました。
一般にモラルハラスメントの加害者は他人に対しては社交的で温厚な印象であることが多いと言われています。
「自覚はありませんでしたが、主人や子供に対しても私はモラハラ的な言動を取っていたことに気付きました。普段はそうでもないんですが、約束を破ったときや辻褄の合わないことを言われると許せなくて相手を罵倒したり無視したりしていたんです。そのときは自分が正しいと思っているので、その行為に対して罪悪感などありません」。
そのことに気付いてからは意識してそういう行動を取らないようにしているそうです。
モラルハラスメントの被害者を救うためには
A子さんのように自分が加害者だと気付くケースは稀です。被害者が「相手を怒らせてしまうのは自分に非があるからだ」と思い込んでいると、モラルハラスメントはエスカレートしていきます。
モラルハラスメントの被害に基準を設けることは困難です。人によって「耐えられない」と感じる行為には差があるものです。
実際に重要なのは「自分がモラルハラスメントの被害者かどうか」ということよりも「自分が相手から受けている行為に耐えられないほどの苦痛を感じている」ということなのです。
モラルハラスメントは日常に当たり前のように繰り返されるので、加害者も被害者もそれを自覚することが難しいかもしれません。
しかしA子さんのように「モラルハラスメント」という言葉を身近に感じることで自覚に繋がるというケースがあるのならば、こうしてモラルハラスメントについての情報が発信されることで被害者を救えるかもしれません。
「もしかして」と考えるきっかけになれば、それが解決への大きな一歩に繋がるはずなのです。
まとめ
自覚がないだけかもしれない?身近すぎるモラルハラスメント(後編)
自分がモラハラの加害者だと気付いたA子さんの話
モラルハラスメントの被害者を救うためには