離婚には金銭問題が付き物です。 慰謝料 、養育費、治療費など形態は様々あります。金銭を請求することにばかり目が行きがちですが、金銭の受け渡しがあるということはそれに伴う権利関係が発生してくるということです。この金銭を 税金 という観点からお話しします。
慰謝料には税金がかかるの?
まず税金についてざっくりと説明
税金には役割があり、大きな目的は社会の安定化や公平な社会秩序の維持にあります。身近なところで言うと、スーパーやコンビニなどで買い物した際に支払う「消費税」があります。この消費税は「間接税」に分類され、商品やサービスの価格を通じて転嫁されることを予定した税金です。
一方、納税者と納税義務者が一致することを予定したのが「直接税」であり、法人税・所得税・贈与税・相続税などがこれに当たります。ということは慰謝料と呼ばれるものの大部分はこちらに分類されます。
慰謝料とは
難しい話をする前に、簡単に結論から言います。慰謝料と呼ばれるものの大部分は税金がかかりません。
お金を渡す、お金を受け取るから所得になるのでは?と思う方もいるでしょう。所得とは利益のことを指し、慰謝料は性質的に損失を埋めたものに過ぎず、新たに得た所得ではありません。したがって所得税はかからないということです。
一般的な感覚から相当だと思われる金額をはるかに超えている場合は、超過した部分が贈与と認定される可能性があります。そうなれば、お金を受け取った側に贈与税がかかりますので注意しましょう。
所得税法施行令の第30条では税金がかからないものを列挙しています。
そこには「心身に加えられた損害について支払を受ける慰謝料」が挙げられており、具体的には「事故による負傷について受ける治療費や慰謝料、それに負傷して働けないことによる収益の補償をする損害賠償金など」と記載されています。
法改正等が入る可能性もありますので詳しくは国税庁のホームページをご覧になるか、弁護士・税理士・税務署などに問い合わせてください。
養育費について
養育費を受け取る場合、これは所得ではありませんので税金はかかりません。そもそもの話ですが、例えば養育費を支払う側は働いて給料をもらっているとします。その給料には所得税がかかっていますので、支払う養育費に所得税をかけると所得税の二重課税になってしまいます。
養育費は受け取る側のお金ではなく、子どもに対してのお金です。現実離れした金額が振込まれていたり、養育費をその目的以外に使用したりした場合は調査が入る可能性があります。
支払う側としては、別居しているとしても扶養義務として一定の年齢に達するまでの場合は、支払っている期間に限り「生計を一にしている」ものとして扶養控除の対象となります。このことは国税庁ホームページの「生計を一にするかどうかの判定(養育費の負担)」でも紹介されています。
治療費・医療費について
慰謝料を治療費・医療費として受け取る場合には注意が必要です。
受け取った金額は、治療費・医療費を補てんする金額であるため、医療費控除を受ける場合は支払った医療費の金額から差し引くことになります。しかし、その医療費を補てんし、なお余りがあっても他の医療費から差し引くことはできません。
こちらも養育費と同様に、現実離れした金額が振込まれていたり、その目的以外に使用したりした場合は調査が入る可能性があります。慰謝料を治療費・医療費としてのみ請求する場合は、請求する名目についてもよく考えて決めることをお勧めします。
慰謝料と財産分与
慰謝料として請求する場合、普通のサラリーマンで多くても財産分与と慰謝料を合わせて200から500万円ほどです。「多くて」ですので、請求するのは自由ですが実際に上限まで支払ってもらうのは大変な作業です。
慰謝料は地方裁判所、財産分与は家庭裁判所の管轄になっています。民法では「一切の事情を考慮して」という規定がありますので、財産分与に慰謝料が含まれるのかはきちんと明記しておくべきです。
通常、離婚により相手方から財産をもらった場合は、贈与税がかかりません。「夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたもの」とみるからです。もちろん多すぎる場合は例外がありますので注意しましょう。
慰謝料のことで頭がいっぱいにならないよう、財産分与のことも同時進行で考えてください。
まとめ
慰謝料には税金がかかるの?
まず税金についてざっくりと説明
慰謝料とは
養育費について
治療費・医療費について
慰謝料と財産分与