さまざまな事情により、離婚をして多額の借金を背負ってしまうシングルマザーがいます。それまで専業主婦としてやってきたのが、いきなり自立して生活していくということだけでも難しいのに、借金の返済まであるとかなり厳しくなります。
そのような場合には、自己破産をすることも考えるかもしれません。しかし、 破産宣告 をしても借金がゼロにならないケースについては注意が必要です。
破産宣告をしても借金がゼロにならない場合とは
免責不許可事由に該当する場合には注意を
破産法では、免責不許可事由として「ギャンブルや浪費による借金」、「偏頗弁済」、「財産の隠匿等」、「詐欺行為」、「クレジットカード現金化」などが定められています。
偏頗弁済とは、破産の申し立てをした後に特定の債権者にだけ返済をする行為です。破産の申し立てをした後は、勝手に財産を処分してはいけません。
財産の隠匿とは、財産があるのにないフリをすることです。財産を親や親族に預けたり、不動産の名義を変更したりする行為がこれにあたります。
詐欺行為とは、所得証明書を偽造してお金を借りる行為などです。クレジットカード現金化については最近問題になっていますが、これも不正な行為なので免責が下りない理由になります。
ギャンブルや浪費での借金
離婚時に一番問題になりやすいのがギャンブルや浪費での借金でしょう。ブランド品の購入でも、それがただちに浪費となるわけではありません。浪費とは、収入に見合わないぜいたく品の購入をすることですが、厳密に考えすぎるとほとんどのケースが浪費となってしまいます。
高給ホテルに泊まったり、温泉に行ったり、高いお肉を買って食べたりといったことはだれにでもあることです。それがただちに浪費となるのなら、だれも自己破産はできないことになってしまいます。
実際には、ギャンブルや浪費で借金をした場合でも、それが一定レベルまでならば見逃してもらえます。また、ギャンブルや浪費に該当する場合でも、裁判官の裁量によって免責が下りることもあります。
シングルマザーの場合には、自己破産をする必要性が高いので、よほどでない限りは免責が認められるでしょう。
慰謝料や養育費について
自分が自己破産をする場合だけでなく、元夫が自己破産をしてしまうことを心配する人も多くいます。元夫が自己破産をしてしまった場合、慰謝料については免責されてしまう可能性がありますが、養育費は免責されることがありません。
慰謝料は損害賠償請求権の一種ですが、「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」、「故意または重過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」については非免責債権となっています。
逆に言えば、これらに該当しない損害賠償請求権については免責されてしまうということです。免責されるかどうかは、不倫やDVの度合いが悪質であったかどうかによって決まります。不倫による慰謝料は免責される可能性が高く、DVによる慰謝料は免責されない可能性が高いようです。
養育費については、過去の養育費も含めて、すべて非免責債権です。しかし、過去の養育費をさかのぼって請求することは、相手の資力にもよりますが、実際には難しいので、後回しにせずにしっかりと現在の養育費を請求することが重要です。
管財事件と同時廃止
破産宣告と同時に自己破産の手続きが終了するのが同時廃止です。破産管財人が選任されて、調査、財産の分配などがされるのが管財事件です。
自己破産のほとんどは同時廃止になりますが、たくさんの資産がある場合や、免責不許可事由に該当する場合には管財事件となってしまう可能性が高くなります。
管財事件となってしまうと、同時廃止になったときに比べて20万円程度の費用が上乗せされてしまいます。破産をする人としては同時廃止になってくれたほうがありがたいのですが、どちらになるかは裁判所が決めることです。
最後に
いかがでしたでしょうか?実際には、免責不許可事由に該当することはほとんどありません。不正を犯したり、収入に見合わないような浪費をしていなければ、同時廃止になって借金をゼロにすることができます。
自己破産をすると、5年から10年程度はブラックリストに載ってしまうので、クレジットカードやローンが利用できなくなるということには注意が必要です。賃貸の保証会社の審査にも影響することがありますので、賃貸契約ではできるだけ連帯保証人を用意するようにしましょう。
まとめ
破産宣告をしても借金がゼロにならない場合とは
免責不許可事由に該当する場合には注意を
ギャンブルや浪費での借金
慰謝料や養育費について
管財事件と同時廃止
最後に