「夫婦別姓~反対意見からの考察~(前編)」では、夫婦別姓に対するメリットやデメリットについてご紹介いたしました。後編では、さらに踏み込み女性の人権問題や結婚制度に焦点をあて 夫婦別姓 について考えます。
夫婦別姓~反対意見からの考察~(後編)
別姓賛成者の言うメリット~その③~
賛成派の唱えるメリット、その③は「女性の個人情報の保護ができる」と言うものです。
女性にとって結婚しているかどうかは完全にプライベートな問題で、とやかく言われるものではない。結婚を機に改姓することで世間に公表することになっている…、別姓になれば、そんなことはなくなるといった意見です。
果たしてそうなのでしょうか? 多くの花嫁は結婚披露宴やパーティーを開催し、家族や友達、上司、同僚を招きます。この時点で、6~7割の方はあてはまりません。
少数派の結婚していることをあまり知られたくない方々は、戸籍上の改姓を行って、仕事は旧姓で通されたら良いのではないか?と思います。芸名やペンネームで仕事している人々もたくさんいますし、結婚後も旧姓で呼び合っているキャリアウーマンもたくさんいます。
結婚における改姓については、それほど問題はないのかも知れません。
一方、離婚した時は、子供が居ると、いろいろと考えるべきことがあります。母親が親権を持ち養育する場合、婚姻時の姓を母子で継続する方も多いようです。学校などで冷やかされたりされないようにとの配慮から、継続した姓の選択ということです。
もちろん、母子で別姓も選択できますし、母子で旧姓に戻っても、小学校・中学校では、お願いすればこれまでの呼び名で生活できるよう配慮してくれるそうです。問題は再婚です。再婚するとしたらどうするのでしょう?
母子別戸籍も可能ではありますが、養子縁組しない限り、再婚相手の死後、子供への財産分与は一切ありません。とても難しくややこしい問題です。
一方、夫婦別姓の場合は2つのパターンがあります。
- A:子供が父方の姓=婚姻時から母子は違う姓なので違和感なし。
- B:子供が母方の姓=何も変わらないので何の問題もなし。
再婚も夫婦別姓なので問題なし。これで問題はなくなった!と喜ぶ前に考えてみましょう。Aのパターンで再婚すると、夫・妻・子供が別姓となります。果たしてこれで本当に良いのでしょうか?
また、Bのパターンでも、再婚の問題は何ら変わりません。ファミリーネームである姓が、そうではない状態になれば(つまり、個人をあらわす単なる記号・呼称)そんな問題も気にならなくなるのでしょうか?
もしかすると、マイナンバーは家族別姓時代への楔として、個人認識の予防措置なのかも知れませんね。
別姓賛成者の言うメリット~その④~
その④は、別姓にすることで「女性の社会進出が進む」と唱えられています。まだまだ家父制度の残る日本で、夫婦別姓が進めば、そう言った古い因習も壊され、女性が社会に出ていきやすくなるというものです。
先述の「その①男女平等」でも述べましたが、どちらの姓にするかは、あくまでも民法上は平等です。その圧倒的な偏りは、時代と文化慣習による選択でした。
日本では個人の名前を氏・名の順で書き記します。その為か、氏で呼び合うことが多い社会です。欧米ではその順序も逆で、みな、ファーストネームで呼び合います。国民性も全体主義と個人主義。個人より家、家より町、町より国なのが日本人でした。
一昔前は、娘しか居ない家へ婿入りする男性は当たり前にいました。戦後の高度経済成長とリンクして核家族化が始まった頃から、その数は減少します。
つまり、個人の都合や意思よりも「家」の存続が重要視されてきた文化の衰退です。夫婦別姓によってこの「日本的なモノ」をさらに壊すのか?現状維持で守っていくか?とても重要な考えどころではないでしょうか?
別姓の目的は?
さまざまなメリットを掲げ夫婦別姓を唱える人は少なくありません。ですが、その多くは女性の人権を謳ったものが多いように感じます。確かに、未亡人、主人、旦那、家内、扶養家族など、どう考えても可笑しな呼称が未だ当たり前に使われています。
先ずは、その辺りの事から変えていかなくてはなりません。こうしたことは、賛成派の目的も包括し果たしていると考えらます。また、世界の先進国で別姓を認めている国々の実態を知ることも大切なことだと言えます。
別姓制度を執る多くの国々は「事実婚」が過剰に増加し、その実態を法律的に追認している場合がその大半です。特に顕著な事情を抱えているのがスエーデンの例です。
スエーデンの現行法は法務省の唱える「選択的夫婦別姓」とかなり似た物ですが、その結果ともいえる、都市部の家族構成の割合をみると、「母子のみ」が1位で、続いて再婚同士で、その連れ子を含む「混合家族」、そして両親とその子供、最後に「父子のみ」となっており、スエーデンにおける家族制度は崩壊し、今の日本社会からは想像しがたい現状を呈しています。
別姓が可能なフランスやカナダでも「原則的に同姓」であり、例外を認めるための別姓制度であると言えます。法律的な追認であることがよくわかります。
そして、ヨーロッパ諸国の同姓制度は完全に父姓優先の法律であり、日本の夫婦選択制とは異なるものです。つまり、法的には日本の現行法は、法的にはかなり男女平等であると考えて良いということです。
不平等は法律ではなく「人々」にあるのではないでしょうか?
読者の皆様が「夫婦別姓」を考える一助になれば幸いです。
まとめ
夫婦別姓~反対意見からの考察~(後編)
別姓賛成者の言うメリット~その③~
別姓賛成者の言うメリット~その④~
別姓の目的は?